落合博満さんの講演会に行ってきました。
場所は岐阜県多治見市のバロー文化ホール。
今回の講演会、実は参加するまでに妙にいろいろありました。
まず最初にやったことが、
「このイベント、本当に大丈夫なやつ?」
という確認。
最近、落合博満さんの名前を使った偽イベントの話があったので、チラシを見た時点ではちょっと警戒していました。
調べてみると、会場の公式情報にも掲載されていて、チケットぴあでも販売されている正規のイベント。
ここでまず一安心。
元同僚から紹介されたイベントだったので、疑いたくはなかったのですが
やっぱり少し心配になってしまって。
ありがたい。ちゃんとしたイベントで、近くの県で、参加しやすい講演会
ものすごくありがたい。
ただ、このあたりから妙なプレッシャーが始まります。
「紹介してもらった、あまり適当な格好で行くのもなあ……」
別に会社を代表して出席するわけでもない。
誰かに挨拶する予定があるわけでもない。
ただの一般参加者です。
それなのに、自分にとって「講演会」というもの自体が初めてだったので、どのくらいの服装が普通なのか全然分からない。でもなんかイメージ的にちゃんとした感じでないとダメじゃない?とか思ってました
普段の仕事ではスーツを着ません。
今の体型に合うスーツも持っていません。
そもそも日常ではかなりカジュアル寄りの服ばかり。
「講演会ってスーツなのか?」
「いや、そこまではいらないだろう」
「でもTシャツとジーンズは違うのか?」
「ポロシャツ?」
「いや、ポロシャツ苦手なんだよなあ……」
と、考え始めたら止まらなくなりました。
最終的にはユニクロへ行き、久しぶりに新品のパンツを購入。
黒っぽいチノパンを裾直しまでしてもらいました。
ここまで来ると自分でも、
「いや、落合さんの話を聞きに行くだけだぞ」
と思うんですが、初めての場所というのは勝手が分からないから怖い。
前日の夜には、黒系のシャツに黒チノ、さらに黒い靴を並べて、
「黒+黒+黒。厨二病の人みたいになってきたな」
なんて状態になっていました。
ブラウンのチノの方がいいのか。カーキの方が自然なのか。
黒チノだと少しブカブカして見える。
写真まで撮って比較していました。
さらに当日の朝。
出かける直前に家族から、
「その色落ちした服着ていくの?」
と一言。
昨日まで散々考えて一応納得していたのに、一瞬で不安が復活しました。
こういう一言、出発前に効くんですよね。
それでも最終的には、色褪せた黒系のシャツにブラウンのチノパン、黒い靴という格好で出発。
行きは高速道路。
渋滞もなく、かなりゆったり走れました。
会場の駐車場が少ないという話だったので早めに到着。
実際、同じことを考えている人が多かったのか、駐車場には車の中で待っている人がかなりいました。
ここまで来れば一安心。
……と思ったら、今度は靴です。
実際に歩いてみると、黒い靴のサイズが全然合っていない。
一歩歩くたびに踵が浮く。
まともに歩くと、なんというか、
「トイレを我慢している人」
みたいな変な歩き方になる。
仕方がないので車に戻り、余っていた雑巾を切って靴の中に詰めて調整しました。
なぜ落合博満さんの講演会へ行く直前に、駐車場で雑巾を切っているのか。
自分でもよく分かりません。
そしていよいよ会場へ。
ここで、昨日から悩んでいたことの答えが出ました。
驚くほど、みんな普通の格好。
ジーンズ。
スニーカー。
普通のTシャツ。
中にはハーフパンツの人までいます。
あれ?
昨日まで自分はいったい何と戦っていたんだ。
せっかくの講演会。
初めての経験。
そんなものが重なって、勝手に「ちゃんとしなきゃ」と思い込んでいたんでしょうね。
冷静に考えれば、一般向けに何度も開催されている普通の講演会。
自分は講演する側でも、会社の代表でも、来賓でもありません。
ただの参加者です。
ということで一度会場に入ってしまえば、もう服装なんてどうでもよくなりました。
そして講演が始まります。
率直な感想としては、話はかなりあちこちに飛びます。
講演タイトルは「オレ流の采配 ~結果を出す決断力~」でしたが、最初から最後までテーマに沿って順番に話していくような講演ではありませんでした。
昔の話。
選手時代の話。
監督時代の話。
現在のプロ野球の話。
中日ドラゴンズの話。
思いついた話題を次々と話しているような感じ。
最後の方で少し講演テーマに寄せている感じもありました。
それでも、個人的にはめちゃくちゃ楽しかったです。
自分はもともと落合さんの著作を読んでいますし、中日ドラゴンズ監督時代も見ていました。中日ファンです、今のところは。
だから知っている話もあれば、初めて知る話もある。
特に若い頃の話は面白かった。
今では三冠王を三度獲った大打者、名監督というイメージですが、若い頃からずっと野球人生が順風満帆だったわけではありません。
それでも、自分がやると決めたことに対しては、かなり淡々と進んでいく。
以前から著作を読んでいて思っていたのですが、この人は本当に有言実行なんですよね。
何かをやると決める。
そのために必要なことをやる。
できるかできないかを必要以上に悩まない。
もちろん、その裏には相当な努力があるはずです。
ただ、本人の話を聞いていると、その努力をものすごく大げさなこととして語らない。
だから余計に、
「いや、それ普通にすごいことやってるよね?」
と思ってしまいます。
監督時代の話は、当時の中日を見ていた人ならかなり楽しめると思います。
有名な「ガッツポーズ」の話なども出てきて、会場から笑いが起きる場面もありました。
中日ドラゴンズの話になると、やっぱり会場の反応もいい。
「来年監督をやってください」
というような流れになった時には拍手まで起きました。
あの一体感は面白かったです。
講演後半では、予定時間を少し延長して、指導者に向けた話もしてくれました。
ここはかなり印象に残りました。
落合さん自身は、
「自分はほとんど教えていない」
という趣旨の話をしていました。
聞きに来た選手には伝える。
選手同士で競争させる。
指導者のやり方を押し付けてはいけない。
人にはそれぞれの方法がある。
そんな話です。
ただ、以前読んだ著作を思い出すと、
「いや、勝つために必要だと思った選手には結構みっちり教えてたよね?」
とも思います。
和田一浩さんや森野将彦さんの話などを読むと、かなり細かく関わっています。
このあたりは、落合さんの中では「教える」という言葉の意味が少し違うのかもしれません。
一方的に全員へ同じことを押し付けることはしない。
必要としている人には伝える。
勝つために必要だと思えば関わる。
そういうスタンスなのかな、と講演を聞きながら感じました。
この講演、
「落合博満さんが好き」
「野球が好き」
「中日時代を見ていた」
という人ならかなり面白いと思います。
逆に落合さんにも野球にも特に興味がない人が聞くと、
「話があちこち飛ぶし、聞き取りにくいな」
となってしまう可能性はありそうです。
自分の場合は最初から最後までかなり聞き入っていました。
そして講演が終わるまで、あれだけ悩んでいた服装のことを完全に忘れていました。
終了後、時間的にご飯を食べていなかったので、会場から5分くらい歩いてコンビニへ。
そこで久しぶりに思い出します。
「この靴、めちゃくちゃ歩きにくいな」
講演中に気になった服装のことは、それだけでした。
前日まで、
黒チノがどうだ。
ブラウンがどうだ。
カーキだと普段着すぎるか。
講演会にスニーカーはどうなのか。
なんて散々考えていたのに。
いざ行ってみれば、周囲は普通の普段着。
講演が始まれば、そんなことは完全に忘れて落合さんの話を聞いている。
初めての場所って、勝手が分からないぶん、自分で必要以上にハードルを上げてしまうんだなと思います。
ただ、今回服を選んでいた時間そのものは結構楽しかったです。
これをきっかけに、普段着だけでなく「ちょっとちゃんとした私服」くらいは持っておこうかなとも思いました。
そして、ちゃんとサイズの合う靴も。
これは大事。
今回の講演を聞いて、久しぶりに落合さんの本も読み返したくなりました。
手元にあるのは『采配』と『決断』。
そして森繁和さんの『参謀』。
今改めて読むと、講演を聞く前とはまた違った読み方ができそうです。
服装に悩み。
駐車場を心配し。
靴に雑巾を詰め。
最終的にはそんなこと全部忘れて、落合博満さんの話を楽しむ。
初めての講演会としては、なかなか良い一日でした。
そして次に同じような講演会へ行くことがあったら、
たぶん普通にスニーカーで行くのです


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